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蔵元だより

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其の87 日本人のDNAに刻みこまれた春の一大イベント~そうだ、花見いこう。~

四季の移り変わりがはっきりと感じられるわが国では、昔から日常の生活に季節を採り入れる術を心得ていたようです。
 春の桜、夏の蛍、秋の月、冬の雪。その中でもとりわけ春の桜。花見は日本人がもっとも心踊らせる季節の恵みではないでしょうか。
 花見といえば桜の花を見に行くということを意味していて、わざわざ桜の花と言う必要はありません。それだけ桜は日本人に親しまれている花だといえるでしょう。
 しかし、花見は奈良時代に中国から伝来した梅を貴族たちが観賞した事が起源だといわれ、もともとは梅見が主流だったようです。
 それが平安時代になると桜の花見に変わったようで、それは歌集の中で確認することができます。『万葉集』では桜を詠んだ歌が約40首、梅を詠んだ歌は約100首あったのに対して、平安時代の『古今和歌集』ではその数が逆転します。「花」といえば桜を意味するようになるのがもこの頃からなのだとか。ただこの頃は貴族だけが野生の桜を見て楽しんでいたのだそうです。
 『日本後紀』(840)によると、嵯峨天皇が812年に神泉苑(しんせんえん)にて「花宴の説」を催しました。これが記録に残る最初の桜の花見なのだとか。以降、花見は天皇主催の定例行事として行われることとなりました。
 吉田兼好の『徒然草』(1330頃?)には貴族風の花見と、そうでない田舎者の花見の違いが書かれていて、室町初期には地方の武士階級にも花見の宴は行われていたことが読み取れます。(参照「徒然草 第百三十七段」)その後、園芸用として植栽されるようになり、各地で桜を鑑賞することができるようになりました。
 歴史上もっとも大規模なものとして知られるのが1598年3月15日に行われた豊臣秀吉の醍醐の花見です。それは1300人規模での壮大なもので、花見のためだけに桜を運んだとの記録もあります。
 江戸時代になると、ようやく庶民も花見を楽しむようになります。そのきっかけは三代将軍家光が上野の山に桜を植えたこと、八代吉宗が飛鳥山や品川御殿山、向島の隅田堤に桜を植えたことだといわれています。
 桜はつぼみがほころび始めると一斉に咲き、わずか2週間ほどで散るため、毎年人々に強い印象を残します。生命力の強い木であると同時に、潔さを併せ持つ桜はしばしば人の命の儚さになぞらえられます。日本人の美意識に共鳴したからこそ、ここまで愛される花になったのでしょう。
 季節のうえでは春になりましたが、桜咲く時期まではもう少しかかるようです。
 桜が咲いたら美味しい料理とお気に入りのお酒を持って、花見に出かけられてはいかがでしょうか。

(参照「徒然草 第百三十七段」)
原文
すべて、月・花をば、さのみ目にて見るものかは。春は家を立ち去らでも、月の夜は閨のうちながらも思へるこそ、いとたのもしうをかしけれ。よき人は、ひとへに好けるさまにも見えず、興ずるさまも等閑なり。片田舎の人こそ、色こく、万はもて興ずれ。花の本には、ねぢより、立ち寄り、あからめもせずまもりて、酒飲み、連歌して、果は、大きなる枝、心なく折り取りぬ。泉には手足さし浸して、雪には下り立ちて跡つけなど、万の物、よそながら見ることなし。

現代語訳
月であっても桜であっても、目だけで見るものだろうか?桜咲く春は家から出なくても、満月の夜は寝床にいても、想像するだけで気持ちを高めることはできる。粋な人は面白がるような様子でもなく、もあっさりしている。中途半端な田舎者ほど、実体だけをねちっこく有り難がる。桜の木の根本にへばりついて、身をよじらせ、すり寄って、穴が空くほど見つめていたかと思えば、酒を飲み、歌を詠んだあげく、太い枝を折ったりする始末。澄んだ泉には手足を入れ、雪が降れば足跡を付け、自然をあるがままに見ることをしない。

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五連の反り橋と桜が織りなす美の饗宴 山口県を、いや日本を代表する名橋「錦帯橋」は、一昨年の『NIKKEI PLUS1』で桜の名所として西日本第一位に輝きました。 桜咲く季節の絶景をどうぞお楽しみください。


桜の花から生まれたお酒!?

 「白ワインのような」と表現される純米酒があります。春をイメージさせる華やかなピンク色のラベルに彩られたお酒、「花ならつぼみ」のことです。
 実はこのお酒、桜の花から造られています。といえば、皆さん驚かれるでしょうか?純米酒ですからもちろん主原料は米と米こうじです。では桜とはいったい・・・?
 今から10余年前、山口県産業技術センター(宇部市)の研究により、世界で初めて桜の花から清酒酵母が分離されました。
 その酵母は「やまぐち・桜酵母」と名付けられました。そしてその酵母で醸したのが「花ならつぼみ」なのです。桜を連想させる穏やかな香りの中に広がる、やわらかな甘酸っぱさが心地よく、「白ワインのような」と表現されているのです。
 ですが、これは別にワイン風味の日本酒を作ったわけではありません。米と米こうじだけを原料にした純米酒がブドウからつくられるワインの様だと表現されることはすごいことだとは思いませんか?
 米の力、米こうじの力、そして発酵の力がこうした奇跡のような味を生み出すのです。
 食前、食後酒として又、デザートと一緒に冷やしてお楽しみいただけば、きっと食卓に一足早く春が訪れることでしょう。
 花にたとえるとつぼみの時期の、初々しい新感覚の低アルコール純米酒「花ならつぼみ」をどうぞお試しください。


長屋の花見

落語でも花見をテーマにした噺がいくつかあります。庶民の春の娯楽はやはり花見だったのでしょう。花見をテーマにした噺でよく知られているのが「長屋の花見」(上方落語では「貧乏花見」)。愛すべき庶民たちの花見をお楽しみください。。

 貧乏長屋の一同が大家に呼ばれた。家賃の催促だろうと思ってみんな戦々恐々。なにしろ、入居してから十八年も家賃を一度も払っていない者もいれば、もっとすごいのは「家賃って何だ?そんなの食ったことがない。」と。
 大家のところに行ってみると「ウチは貧乏長屋などといわれているが、貧乏神を追っぱらうために、みんなでパーっと花見としゃれこもう」と言う。
 酒も一升瓶三本用意したと聞いて、一同大喜び。ところが、これはお茶を水で薄めたもの。色だけはそっくりの「お茶け」。玉子焼きは沢庵、蒲鉾は大根を切っただけのもの。毛氈(もうせん)のかわりに筵(むしろ)。
 桜は満開。大変な人だかりで周りは大盛り上がり。だけど毛氈のむしろを敷いて、酒やごちそうの代用品を並べても盛り上がらない。
 「お茶け」は誰も飲みたがらず、一口で捨ててしまう。「熱燗をつけて」「いや、焙じた方が・・・」
玉子焼きは「尻尾じゃねえとこを取ってくれ・・・」
「蒲鉾」を食べるときには「あっしゃあこれが好きでね、蒲鉾おろしにして・・・」って。
 大家に酔っぱらえと命令されたものは「酔ったぞ!オレは酒飲んで酔っているぞ!家賃は絶対払わねぇ!」と悪酔い。「悪い酒だな。どうだ。灘の生一本の味は?」「宇治かと思った・・・」「口あたりはどうだ?」「渋口だ・・・」
 一人が湯のみをじっと見て「大家さん、近々長屋にいいことがありますよ」「そんなことがわかるのかい?」「酒柱が立ちました」


参考文献
日本の酒文化総合辞典 柏書房
あらすじで読む古典落語の名作 中経出版
らくご長屋 ポプラ社

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