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二十一世紀 二〇〇三年十一月(96)

2008年5月28日(水)

 

酒米  日本名酒の旅  日本の旅  全国厳選六十蔵元を訪ねて

二十一世紀 二〇〇三年十一月(96)
地方文化の会(岩国地域)

本物思考

酒井酒造株式会社 大下勝己

 日本酒は吟醸酒、純米酒、本醸造酒、普通酒、三倍増醸酒の五つのカテゴリーに大別されます。この五つの中で、「本物の日本酒」とはどれでしょうか。
答えは、すべて「本物の日本酒」です。
酒税法によれば日本酒とは次のように定義されています。(この中で「清酒」と「日本酒」は同意語です)

「清酒」とは、左に掲げる酒類をいう。

【酒税法第三条三】
イ、    米、米こうじ及び水を原料として醗酵させて、こしたもの
ロ、    米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として、醗酵させてこしたもの(イ又はハに該当するものを除く)但し、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む)の重量をこえないものに限る
ハ、    清酒に清酒かすを加えて、こしたもの

前述した五種類は酒税法に準じて醸造されている限り、「本物の日本酒」と言わざるを得ません。
「言わざるを得ない」と書きました。「本物の日本酒」という命題に対しては種々の議論がなされており、その答えは今も出ていないというのが現実です。「本物の日本酒とは」。これは「本来あるべき日本酒の姿とは」と置き換えられるかもしれません。
日本酒は「米(および米麹)から造られる酒」だと一般に認識されています。しかし、酒税法の清酒の定義を見てみると、必ずしも米(および米麹)だけを原 料としているわけではなく、その他の原料も使用していることが分かります。純米酒の原材料は米、米麹。吟醸酒、本醸造酒及び普通酒は米、米麹及び醸造アル コール。三倍増醸酒は米、米麹、醸造アルコール、糖類及び酸味料等となっています。(吟醸酒の中で純米吟醸酒の原材料は米、米麹のみ。また普通酒の中でも 特に「米だけの酒」に関しては、原材料は米、米麹のみです)
日本酒の起源を米、米麹、水で仕込むとした延喜式に求めるとするならば、純米酒こそが「本来あるべき日本酒の姿」だといえるのかもしれません。
「本来あるべき日本酒の姿」という命題に対して議論される多くのことは、アルコール添加酒の是非についてであろうと思います。
ここでアルコール添加酒とは、第二次大戦中、酒造りに使用する原料米の供給が悪化したために、昭和十七年度に清酒の原料として、醸造アルコールの使用が認められたことに端を発する製造法により製造された清酒をいいます。
清酒のもろみ末期に焼酎を添加する柱焼酎(柱焼酎の目的は清酒もろみの腐造を防ぐことにありました)という手法については十七世紀にすでに記述があり、 アルコール添加はこの柱焼酎を根拠に正当化される例も少なくありません。しかし、この柱焼酎は清酒の増量擁護論の後ろ盾とはなりえていません。
アルコール添加が認められたその七年後の昭和二十四年には三倍増醸法が制定されました。これは戦後の米不足が引き起こした法律で、米だけから清酒を造る 場合と比して三倍の清酒ができることからその名が付けられています。その増えた中身は大量の醸造アルコールとブドウ糖、酸味料、水です。
アルコール添加には口当たりを軽くしたり、酒の香りを引き出したりといった使用目的(理由)があります。三倍増醸酒については時代が求めて法制化された背景があり、現行の酒税法では全て同列で日本酒として扱う以外ほかにないのです。
アルコール添加酒の是非は私には分かりません。私が語るべき問題ではないのかもしれません。ただ、杜氏が昼夜を問わず、寸暇を惜しみ、情熱を捧げて醸す 大吟醸酒にさえアルコール添加をすることがあります。(アルコール添加をしない純米大吟醸もありますが)このことから、アルコール添加は酒質の向上に資す る(側面もある)というのは間違いないようです。
三倍増醸酒に関しては、私が勤める酒井酒造・(銘柄 五橋)で、その製造を十年以上も前にやめていることから、この酒の位置づけを察していただければと 思います。しかし、巷において三倍増醸酒は戦後五十年以上もの間製造が続けられ、その固定ファンが存在しているということは無視できない事実です。
ただ、感覚的に物の分別というのはつくようで、ここまで読み進められた方には、「本物の日本酒」の概念が漠然と頭の中に浮かんでいるはずです。「こう あってほしい。」「こうあるべきだ。」綺麗事でなく自然と欲するもの、それが正しい姿、「本物の日本酒」なのではないでしょうか。
余談ですが、製造方法のみならず、原産地という見地においても、「本物の日本酒」という考え方は生まれてくるはずです。酒税法には原産地に関する記述は 全くありません。現在アメリカやオーストラリア、台湾といった諸外国でも日本酒が製造されています。それらの多くは現地で消費されますが、一部日本に輸入 されるものもあります。外国産米で外国人が造った日本酒です。
果たしてこれは「本物の日本酒」なのでしょうか。もちろん「外国酒」とは言いません。残念ながらこれも「本物」と言わざるを得ないのです。酒税法が「日 本国内で造った清酒のみを日本酒とする」と定めない限り、ここには本物、偽物の議論の余地はありません。このことはあまり真剣に議論されることはありませ んが、外国産の日本酒が「本物」であるという世界は正常とは思いたくありません。
何が「本物」で何がそうでないのか。懐疑的に物事を見続ければきりがありません。そこにはデカルトの「コギト・エルゴ・スム」の命題が待っていることで しょう。ただ感覚的に自らが欲する形、それこそが「本物の日本酒」であると考えます。あまりにも漠然としすぎていますが、「本物の日本酒」という定義をす ることはかなり困難です。
ところで、「地酒」という言葉があります。一般的には大手メーカー以外の酒をさすようですが、手元の辞書には「その地でできる酒」とあります。これでは大手メーカーの酒を含む全てが地酒にあてはまってしまいます。
「地酒」という言葉からは、「地方の酒」といった言葉が連想でき、漠然といたイメージが浮かんできます。しかし「地方の酒」は主体が変われば全てが地方 となってしまいます。また「中央に対する地方」と理解すれば、東京以外の酒全てが地酒となってしまいます。「地酒」を言葉から理解しようとするのは案外難 しいようです。
「地酒」に対して抱くイメージからその本質はつかめないでしょうか。地酒をイメージするときになにやら懐かしいような、温かいようなそんな感覚を受けな いでしょうか.例えば旅先で飲んだあのお酒、例えば郷里でよく見かけたあのお酒。いつでもどこでも手に入る大手メーカーの商品からはこんなイメージはわか ないでしょう。地酒こそが持つ温かさ、そこに「本物の地酒」を垣間見ることができるかもしれません。
地酒とはその地特有の酒であって、その地に根ざした酒なのです。このことからすると、大手も中小も、中央も地方も関係ありません。「本物の地酒」であるためには、その地に根ざしているという絶対条件をクリアしてさえいればよいのですから。
例えば山口県の酒造場で新潟の米、アルプスの雪解け水を原材料に、越後杜氏が酒を醸す。これで山口県の地酒になりえるでしょうか?これは「山口県で造っ ただけ」にすぎません。山口県の米、山口県の水、山口県の杜氏が醸した酒、これこそが山口県の地酒と名乗ることができるのだと考えています。このことは簡 単なようで案外難しい。だからこそ最近新しいムーブメントが起こっているのです。
イタリアで起こったスローフード運動が、世界的な広がりを見せています。①郷土料理や質の良い食品を守る、②質の良い素材を提供してくれる小生産者を守 る、③消費者に味の教育を進める、といった運動は本質的に人が欲していた運動だったのかもしれません。しかし、こういった運動は必ずしもイタリアだけで行 われていたわけではありません。実は日本酒の世界でもずっと昔からスローフード的運動はすでに起こっていたのです。
日本酒の世界において、スローフード運動が提唱する姿に近似するもの、それこそが「本物の字明け」であることを求める運動だと私は思うのです。酒井酒造(株)が行ってきた本物を求める運動は、本物志向というより本物思考。そこには信念があります。

1 地酒であることにこだわる
「山口県の地酒」であるためには、「山口県の米、水、人」で醸さなければならないという信念があります。地酒であるということは、地に根ざすということ。風土にマッチした酒質は郷土の味、郷土の個性です。

2 原料米にこだわる
県下でも有数の米どころとして知られる柳井市伊陸の村おこしグループ「トラタン村」において山田錦の契約栽培を行い、良質の原料米を確保。米はいうまでもなく日本酒の主原料。良い酒は良い米から。よい米は良い田から。良いものが良いものを生み出すのだという信念。

3 匠の技にこだわる
完全にFA(FACTORY AUTOMATION)化された工場に、職人は不要です。ボタンひとつで誰にでも同じものを作ることができるからです。酒井酒造(株)で行っている製造工 程の機械化は、酒質の安定と省力化がその目的、決して大量生産が目的ではありません。その中で蔵人たちが技術の研鑽に励んでいます。機会に真似のできない 経験と勘、そして長年培った技が「五橋」の味を醸すのです。ハイテク(文明の力)とローテク(匠の技)のコラボレーションが高品質の酒を醸しだすのだとい う信念。
こだわりは本物を生み出そうとする思考が生む。これらこだわりが生むもの。それが「本物の日本酒」、「本物の地酒」になるのだと信じている。

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